あらすじ
1959年、ドイツの敗北によって第二次世界大戦は終戦した。
ドイツは1939年から始まった黄作戦でパリを落とせなかったが、イギリス大陸派遣軍の四十万人を包囲殲滅した。
これにより、第二次世界大戦は二十年前の大戦を彷彿とさせる塹壕戦と化した。
そんなドイツの猛攻をギリギリで耐えていたフランスでは、戦前からの政治的準内戦状態となっていた。
だがある人物の台頭によりフランスの政治闘争は即座に終了した。
名は芸術家レソト=アルベール。
フランス芸術大学にて絵画を学んでいた彼は突如、現実主義を唱えた。
彼の唱えたそれは一種、極度のリアリズムを突き詰めた物であった。あらゆる宗教、空想、個人の妄想まで一切を禁止。
現実にある物質と事実、自身が所属する国家のみを事実、或いは真実とした。
現実主義は瞬く間にフランス国内に拡散、間もなく全ての富、精神、生命が彼の元に集約された。
彼がどのような手法で国民の一人一人まで人心を掌握したのかは、未だ判明していない。
いずれにせよ、彼はその天才的な指導力によりフランス共和国の国名を超現実国に改名。
戦争の序盤から中盤に掛けて、ドイツの鉄の機甲戦力に対して屍を積み上げ続けることにより抵抗した。
「全員が現実に生きている、我々は今現実にいる。我々の座標は共有されている。偉大なるレソト閣下と共に。我らは恐れない。我らは現実の死を恐れない。我々は現実だ」
全超現実国と占領地に住む人々は揃ってその言葉を口にた。
その国は、二十年にわたり数千万を超える膨大な犠牲を出しながらうねり、ベルリンまで進軍した。
ベルリンは、狂った芸術家とその信奉者により陥落した。
戦後処理を決めるウィーン講和会議にて、講和会議が始まると超現実国は一方的にドイツ全土の併合を宣言した。
同時に超現実国代表団は全世界へ宣戦布告した。
イギリス、ロンドンには数十万の兵士が降下、ソ連の全ての重要都市に対して水素爆弾を投下した。
人的資源を含めた一切の資源の非合理を許さない超現実国は、その技術力により建国から僅か二十年余りで、水素爆弾の開発に成功した。
僅か一年経たずで、ヨーロッパは超現実国に蹂躙され、それでも超現実国の勢いは止まらず、イベリア、バルカン、アフリカ、西アジアと次々に国々を征服していく。
アメリカも東海岸に上陸を受け、気が付けばロッキー山脈まで押し込まれていた。
前線が中央アジアを超えようかとしたとき、突如として超現実国は残存国家に対して一年の休戦を申し出た。
休戦は受諾され、一年間は平和な期間が訪れた。
僅かばかりの平穏の一年はあっという間に過ぎ、再び戦争は動きだした。
超現実国から全国家の大都市に向けて核ミサイルが発射され、それが再開の合図となった。
指揮系統が混乱に陥った最中、各国の政府は突如として超現実国の前線に配置された兵士が一人としていなくなるという報告を受ける。
前線だった場所、続いて前線近くの街中と徐々に前線から蝕むように各地に怪物が現れた。
それを見るなり敵軍の前線の兵士は全員撤退していった、と。
さらに航空偵察機の情報によれば、超現実国における人間の社会活動が見られなくなったとの報告も上がった。
怪物が現れるのと同時期、人類は後に魔法と呼称される根源不明の力を発現した。
宿敵であった超大国は忽然と消え去った。怪物は人類を攻撃してくるが、それも最新の技術、魔法、そして各国の協力により何とか撥ね退けている。
だが、生き残った国々も多額の戦費国債の償還に予算を圧迫されている。
それに、少し世界地図に目をやれば超現実国により生まれた巨大な空白地帯がある。
そこに在る膨大な土地と資源を誰が掌握するのか。
共通の敵をなくし、各人の謀略と思惑が入り乱れる1965年。
未だ、ユーラシア・アフリカ圏は秘密のヴェールで覆われている。
そんな中、秋津篠宮皇国では、莫大な予算が割かれ、さらに招集された各方面のプロフェッショナルによるヨーロッパへの探査が計画されていた。