あらすじ
記録は嘘をつかない。——だから、お前の嘘も全部残っている。
S級鑑定士アルゴスは、ギルドの英雄だ。
希少な鑑定スキルでギルド収益を支え、誰もが彼に頭を下げる。
だがその裏で、女性冒険者の身体情報——体質、感度、あらゆる秘密を貴族や情報屋に売り捌いていた。
被害に気づいた新人冒険者リーネが声を上げるも、ギルド上層部は「証拠がない」と取り合わない。
唯一、耳を傾けたのは記録室の片隅にいた男だった。
ギルド記録係レクト。スキルは『記録』——見たもの、読んだものを正確に記憶し、改竄を見抜くだけの、戦えない地味な力。
八年間「お前には関係ない」と言われ続けてきた男が、台帳と通行記録だけを武器に、S級鑑定士の不正を暴いていく。
剣でも魔法でもなく、「事実の記録」で世界を一つだけ変える物語。
——読まれなかった記録が、初めて誰かを守った日の話。