あらすじ
地方の老舗工務店・嶋屋工務店には、今もなお厳格な「丁稚制度」が残されている。
住み込み、無給、そして――男女問わず三年間、坊主頭で過ごすこと。
十八歳の朝霧唯は、職人になるため、その世界に飛び込んだ。
入門初日、自らの長い髪を剃り落とす。
それは罰ではなく、逃げないための選択だった。
坊主頭の少女は、現場で笑われ、疑われ、試される。
「女なのに」「坊主なのに」――無邪気な言葉から、露骨な偏見まで。
だが唯は、剃り落とした髪の下で、技を覚え、判断を学び、人を預かる責任を引き受けていく。
墨を引き、木を刻み、失敗し、やり直す。
千本の線を引くように、覚悟を積み重ねる日々。
やがて彼女は知る。
坊主は縛りではなく、入口に過ぎないということを。
剃ることで得た強さと、剃らなくても立てる未来があるということを。
これは、ひとりの女性職人が
「削ることで見つけた自分」と
「選び直すことで継いでいく道」を描いた、
再生と継承の職人青春譚である。