あらすじ
この国では、声で詠唱できる者だけが魔術師になれる。
幼い事故で声を失った少女リネアは、その資格を持たないまま、王立魔術院の地下術具庫で壊れた魔導具の整理をする雑務係として暮らしていた。
魔法を学ぶことも、術式に触れることも、本来なら許されない立場だった。
けれど彼女には、誰にも知られていない力があった。
壊れた魔法の“綻び”が見えるのだ。
ある日、学院上層の演習場で、正規の魔術師たちでも止められない大規模な術式事故が起きる。
詠唱で押さえ込もうとするほど暴走する魔法。
それを止めたのは、資格を持たないはずの少女だった。
その沈黙は、無力の証ではない。
王国の魔法が見落としてきた、本当の構造へ触れるための入口だった。
これは、魔法を使う資格すら与えられなかった少女が、やがて王国の魔法体系そのものを書き換えるまでの物語。