あらすじ

2027年、東京。「ブリッツ・アント」と呼ばれる青い錠剤が街に蔓延していた。飲めば正確に眠れる——はずの睡眠薬。しかしこの薬の常用者たちが、次々と身近な人間を殺し始める。 刑事のアキバは捜査の中で気づく。犯人たちの目に、恐怖がない。世間は「被害妄想の副作用」と片付けるが、怯えてもいない人間に被害妄想という説明は成り立たない。 薬の正体を追ううちに、アキバはその開発者——「ニオベ」を名乗る女・アガサに辿り着く。彼女は言う。「壊れたんじゃない。元に戻っただけよ」。薬は感情の記憶だけを静かに溶かし、愛も恨みもない関係の骨格だけを残す。母の愛情が消えた娘に残るのは、「あの人は私を支配していた」という事実だけ——。 そしてアキバ自身もまた、母の影に囚われていた。十四歳のとき、母はある教団の集団自決で死んだ。「息子が永遠に幸福であるように」という祈りを遺して。その祈りは愛か、呪いか。 フロイトの『幻想の未来』を手がかりに、三つの「幻想」が交差する。母の祈り。アガサの科学。そして、すべてを償おうとする男の解毒剤。感情を失えば人を殺し、取り戻せば心臓が止まる——戻る道のない世界で、アキバは最後に何を選ぶのか。

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カクヨム
カクヨム2026/04/04
  • 現在の作品ニオベの涙——感情を消す薬と、母殺しの息子