あらすじ
この現実という、果てしなく奇妙で奇怪で、ある側面においては非常に醜悪でありながらも、また別の側面においては限りなく壮麗で美しくもある、まるでどこぞの天使のような禍々しさを持つものに、はっきり言って私はうんざりしていた。
天魔というにふさわしいこの鳩尾に抱える靄のような世界は、気まぐれに人の精神を蝕んで地の底に引きずり下ろす。
いったい、誰の赦しがあって私の人生を悪くさせるのだろうか。
生活はうまくいかない。
やりたいことはできないし、仕事は体に合わない。
生きていくうえで必要なものだと割り切っていたとしても、それに心が追い付かないのであればそこに意味はない。
そんな現実を生きていくうえで、虚構だけが私の心の支えになった。
かつて人類がその存在を信じてやまなかった神秘。
汎用性が為に打ち捨てられた、森羅万象への自由な解釈の世界──魔術。
それだけが私を私たらしめる最後の楔として、この世に引き留め続けている。
ただ問題であるのは、そんな私の虚構がすべて、ほとんど独学的になされてきたことだった。
あるいは様々な偉人の解釈を借用することはあった。
そういうものを見ていると、これまで自分が築き上げていた世界に対する解釈が、実はいろんな人と似ていたり、あるいはまったく違っていたりすることに気が付いてくる。
世界は解釈であふれているのだと実感する。
その現象が一体どのようなコレスポンダンスの上に成立されているのか、自分の神がどのような姿をしているのかを明らかにして、私による、私の、私のための世界が作り上げられる。
異界を形作る、その現実と虚構のあわいに広がる薄膜に。