あらすじ
高校三年の 朝比奈遼(あさひなりょう)は、小説を書く事を生きがいにしながらも家庭の事情により自由とは程遠い生活を送っていた。失踪した母、借金を重ねる父、夜間バイト。そのすべてが、彼の足首に絡みつく鎖のように重くのしかかる。
そんな遼の両手に、思いがけず花が触れた。
ひとりは、文芸部の後輩 三輪さくら。
遼の作品の大ファンで、眩しいほど素直に彼を慕ってくる少女。
もうひとりは、幼い頃から遼を知る同級生 久遠柚子。
クールで無口だが、誰よりも遼の孤独と弱さを理解している少女。
ふたりから寄せられる優しさは、遼の心をあたため、
「幸せになりたい」という思いを静かに呼び覚ます。
だが、遼は知っていた。
自分には恋愛をする資格などないということを——。
父の借金、暴力、家庭への責任。
幼い妹を守れなかった罪悪感。
そして、自分だけ幸せを求めてはいけないという諦め。
両手に花があるほど、両足の鎖は強く締まる。
それでもさくらは遼の手を掴もうとし、
柚子は遼を「救う」と決意して離れようとしない。
遼は、幸せに向かって歩くことを許されるのか。
それとも、鎖に縛られたまま愛を拒み続けるしかないのか。
交わる三つの心が、それぞれの傷と過去を照らし合い、
やがて遼は選択を迫られる。
——誰かの手を取るのか、それとも誰の手も取らないのか。
そして、自分の足に絡む鎖を断ち切る覚悟があるのか。
「幸せに触れたら、戻れなくなる。」
愛と束縛が同時に迫る、
切なくも温かい青春恋愛ドラマ。