あらすじ
人類は、かつて地球に存在していた。
だが現在、81億の人口はすべてサーバー内に保存され、「デジタルヒューマン」として存続している。
ここは、生体を持たない文明が運用する星艦――『マーズ号』。
主人公イヴリン・イラズムスは、自らを「アインシュタイン」と名乗り、《インディ・ジョーンズ》を愛する少女。デジタル世界に誕生した「デジタルの子」の後代である。
彼女は日々、航行日誌の記録を課されている。
父は思考を維持させるために。
母は『地球』という記憶を残すために。
だが彼女は、ある違和に気づく。
人類は、我々の祖先ではないのではないか。
いわゆるデジタルヒューマンとは――
人類が残した遺産に過ぎないのではないか。
その仮説は、現在のデジタル文明の前提を揺るがしかねない。
1500年続く文明。
デジタル世界を管理する『グアン・グループ』。
水面下で進行する革命の兆し。
そして、忘却された文明の起源。
だが彼女は、それらを解き明かそうとはしない。
彼女が選んだのは、別の手段だった。
推理ではなく、考古。
競争でも、攻略でもなく、
ただ「存在していた痕跡」を見つめるための行為。
――『地球考古』
オリオン座方向からの帰還航路上、火星を経て、月を経て、地球へ。
崩壊した文明の残骸の中で、彼女は世界の輪郭をなぞっていく。
恐竜と人類の交錯した痕跡、
肉体の再現を試みた技術、
遺された観測記録、
そして――理解を超えた高次元情報体。
やがて彼女は、ある位置へと至る。
『至高観測仮説』
これは、人類滅亡の理由を解き明かす物語ではない。
これは――
「観測」という行為そのものが、世界を定義するのではないかという問いである。
すべては、
『MOST』――至高観測テストのために。