あらすじ
「蝶はもとは毛虫です。どちらも同じ命ではないですか」——誰にも届かなかった言葉。
平安風の異世界——蟲を愛し、蟲を操る姫・蟲愛(むめ)は「穢れ」として宮中を追われた。しかし姫がいなくなった都では、疫病が止まらない。姫の蟲術こそが都を守っていた唯一の盾だったと、追い出した側は知る由もない。
姫は帳面をつけていた。どの蟲をどこに配したか、誰のために何を防いでいたか。その帳面には、自分を追放に追いやった寵姫の御殿を「最も念入りに守っていた」記録が残されている。
帳面を見つけたのは、蟲が怖くて仕方ないのに姫のそばを離れなかった女房・小萩。彼女が三月かけて真実を帝に届けたとき、姫は初めて知る。誰にも見られていないと思っていた日々を、ずっと見ていた人がいたことを。
これは「理解されなかった人」が、遅れて届く承認に涙する話。