あらすじ
深夜零時にだけ、その店は姿を現す。
看板のない『夜明けのカフェ』。
店主の澪(みお)が提供するのは、香り高いコーヒーと——「記憶を預かる」という異能。
苦しみを手放したい客たちは、対価を払い、望む記憶を消して日常へと戻っていく。
——はずだった。
「初めまして。……あの、ここにはどうやって来ればいいんでしょう?」
何度も訪れ、そのたびに同じ記憶の消去を願う女性。
記憶を消したはずの彼女は、なぜか吸い寄せられるように、この店へ帰ってくる。
「どうして私は、ここに来るんでしょう」
忘却は救いか、それとも罪か。
消すことで繋ぎとめ、消さないことで失われていくもの。
彼女の問いに、澪が答えを出せない理由。
記憶を捨てた先にある、静かで残酷な「希望」を巡る物語。