あらすじ
昭和二年、関東。真面目ゆえに損をする女中の琴葉は、十二年仕えた橿原家を突然、解雇された。
年若い女中による失態の責任を押しつけられた琴葉は、行くあても金の蓄えもなく、途方に暮れてしまう。そこに手を差し伸べたのは、橿原家と取引していた実業家・中条千蔭だった。
「……口の堅さは商売人にとって価値がある。信用に足る素質をお持ちです。かねてから、そのような女性を妻として迎えたいと思っていました」
合理性を重んじ、冷酷な判断も辞さない千蔭。だが橿原家の使用人として誠実に働く琴葉の姿を、彼は密かに目を留めていた。
怠ける女中たちと陰口、押し寄せる大量の仕事に疲れ果て、居場所を求めていた琴葉は、戸惑いながらも千蔭の妻になる決意をする。
最初は打算的なものとして始まった夫婦関係だったが、経営者として、あるいは使用人として心を殺してきた二人は、少しずつ距離を縮めていく。
しかし、その幸福に影が忍び寄る。かつて姿を消した千蔭の兄・千秋が、千蔭の商会を乗っ取ろうと暗躍していた。
実利主義の硬派な年上旦那様と、真面目で純朴な年下花嫁の、じれ甘すれ違い婚。
※ムーンライトノベルズにてRシーンのある旧版を掲載中です。