あらすじ

血は、後悔を書き換える。 ――過去へ跳ぶ兄と、兄の未来だけを選び続ける双子の妹が、死へ収束する幼なじみの運命を壊していく物語。  三上悠真は、クラスメイトに殴られ、流れた自分の血を見た瞬間、数秒だけ過去へ遡る能力に目覚める。しかしその発現以前から、世界には綻びがあった。怪我をする前に置かれていた保険申請書。拭ったはずの血痕への違和感。繰り返される既視感。現実はすでに微細な誤差を孕んでいた。  能力を自覚した悠真は、合理的に動く。地震被害を検証し、事故の要因を潰し、分岐を修正する。血を流すたび選択肢は増えるが、同時に何かを削る決断を迫られる。倫理を踏み越えてでも最小損失の解を選び続ける。  だが完璧に回避したはずの世界で、幼なじみ・御影葵だけは死に至る。分岐は変わっても結末は変わらない。因果は乱れていない。むしろ、静かに狙いを定めている。  やがて彼は、過去改変しなければ不可能な痕跡を残したことで国家に察知される。だがそれは偶発的な捜査ではない。彼の血は、国家規模で進行する計画の中で、すでに観測され続けていた。  その中心にいるのが、公安で研究を統括する東條だ。彼は兄妹の血を利用し、自らの過去をやり直そうとしている。悠真はその計画の中核に組み込まれていた。逃走の中で妹・悠花は、兄を救うために自ら血を流してまで次の分岐へ送り出す。  意味を問い続ける悠真に、神谷は「後から分かる」と笑う。壊れかけた家庭を背負いながら、それでも踊り続ける葵。彼女を守ろうとする月ノ瀬。矢印は揃わない。それでも確かに、同じ世界に立っている。  繰り返すたび悪化する世界で、合理は何度も打ち砕かれた。それでも悠真は選び直す。絶望も、痛みも、もうとっくに限界を越えている。それでもなお、託された想いと共に、誰一人欠けさせないという覚悟を握りしめ、世界の前提そのものを書き換えるために――その身を削り続ける。

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カクヨム
カクヨム2026/04/03
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