あらすじ

都会で小説家になる夢に破れ、故郷で父の葬儀社を継いだ浅井誠次。ある日、彼は父の遺品の中から古びたアドレス帳を見つける。そこには、十年前の自分の電話番号が記されていた。 衝動的にダイヤルした誠次が耳にしたのは、解約されたはずの番号から響く、若き日の自分自身の声だった。 「今、傑作を書いているんだ」 過去の自分が語る圧倒的な物語を、現在の誠次は「自分の新作」として盗作し、出版することを決意する。 瞬く間に世界的なベストセラーとなり、栄光の頂点に立つ誠次。しかし、成功と引き換えに、彼の周囲では「影」が消失し、現実が変質し始める。執拗に追う週刊誌記者、不可解な失踪事件を追う刑事。そして、スマートフォンの向こう側で変貌していく「過去の自分」。 書けば書くほど、世界から「浅井誠次」という実体が削り取られていく。彼が最後に手にするのは、至高の栄光か、それとも底なしの虚無か。デジタルとアナログが交錯する、戦慄の自己簒奪ホラー。 登場人物紹介 浅井 誠次(あさい せいじ) 主人公。葬儀社の跡取り。かつて小説家を目指して挫折した過去を持つ。父の遺品から見つけた「過去の自分」との通話をきっかけに、禁断の盗作に手を染める。 浅井(十年前の姿) 中野のボロアパートで極貧生活を送りながら、執筆に命を燃やす若き日の誠次。未来の自分から「編集者」を名乗る電話を受け、物語のアイデアを奪われていく。 美紀(みき) 誠次の恋人。地元で教師を務め、誠次を献身的に支える。誠次が成功を収めるにつれ、彼の「存在感」が希薄になっていくことに誰よりも早く気づき、恐怖を抱く。 門倉(かどくら) 大手出版社「講伝社」の敏腕編集者。誠次の原稿に魅了され、彼をスターダムに押し上げるべく巨大プロジェクトを牽引するが、作品に宿る「毒」に次第に侵されていく。 徳永(とくなが) フリーの週刊誌記者。並外れた嗅覚で誠次の素行を追い、彼がスマートフォンで行っている「異常な対話」の正体に迫ろうとする。 佐藤刑事(さとう けいじ) ベテラン刑事。匿名のタレコミをきっかけに誠次の周辺を調べ始める。論理では説明のつかない怪異に直面しながらも、誠次の「過去の罪」を暴こうとする。 誠次の父(正造) 故人。厳格な葬儀社の先代社長。誠次とは絶縁状態だったが、彼が遺した古いアドレス帳と携帯電話が、物語の運命を大きく変えることになる。

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カクヨム
カクヨム2026/04/03
  • 現在の作品僕の影を俺が踏む時 簒奪のレクイエム (長編バージョン)