あらすじ
最近飛ぶドラゴンを落とす勢いでランクを伸ばすパーティ《風追い》の団長、ギルバードは悩んでいた。自分のパーティに所属する一人の団員についてだ
彼の名はザザン。前線の戦士でありながらロクに戦わず、魔物の解体や荷物運びなどの雑用くらいしかやらないから、「寄生虫冒険者」「ヒル野郎」と同業者たちからも馬鹿にされている冒険者だ。
「ねぇ、ギルバード、いい加減あいつをクビにしましょうよ!」
当然、戦力になっていない彼を、他のパーティメンバーは首にして欲しがっている。
ただ、ギルバードとしては、彼はお世話になったギルド職員の紹介であるし、何よりギルバードが今後”勇者”になっていく上で、無能な仲間を切り捨てた冷血漢という過去はケチがついてしまう――彼の解雇を迷い続けているうちに、一年が経っていた。
パーティメンバーたちのイライラも最高潮に達し、ギルドから依頼されたクエストも、あまりに空気が悪くてなかなかうまくいかない。やはり、ザザンを解雇するしかないのか、とギルバードが思ったその時。
彼らの前に現れた1匹の魔物。王国最強の戦力である王都直属騎士団遊ですら倒すことのできなかったS級の魔物、フェンリルだった。
「――――――ォォォォォォッン!!!!!」
フェンリルの遠吠え一つで、ギルバードたちは動くことすらできなくなる。圧倒的な実力差を前にギルバードは絶望し、死を覚悟したその瞬間。
「……チッ、仕方ねぇな」
魔法【魔刃】によってギルバードたちを救ったのは、寄生虫と馬鹿にされた冒険者、ザザンだった。
ザザンは、ギルバードたちが全く歯が立たなかったフェンリルを、圧倒的な実力差であっさりと追い返してしまう。
そのあり得ない光景を見たギルバードは、感謝よりも先に怒りが来てしまった。
「……なんで今まで、本気で戦わなかったんだ! 君がその実力を発揮していれば、今と真逆の評価を得ていた! ヒルなんて屈辱的なあだ名をつけられずに済んでいたんだぞ!!」
ギルバードの言葉に、ザザンはあっけらかんと言った。
「屈辱的も何も、俺からしたら光栄だけどな、そのあだ名」
「は?」
「だって俺、ヒルになりたいんだもん」
「……はぁ?」
これは、何かに寄生して生きることこそ勝ち組の人生だと本気で考えている男が、寄生される側にならないよう実力を隠しつつ、理想の寄生先を探し求める物語。