あらすじ
嘘で塗り固められた屋敷から、私は素手で歩き出す。
フィーネは公爵家に嫁いで三年、屋敷の家計と使用人の管理を一手に担ってきた。義母ヘルミーナの命令は絶対で、感謝の言葉はなく、あるのは「無能な嫁」という陰口だけ。
ある冬の夜、義母はフィーネに離縁を告げる。「あなたがいなくても、この屋敷は回る」と。フィーネは黙って頷き、翌朝、屋敷を去った。
だが同じ日、異変が起きる。料理長、庭師、侍女長——屋敷の全使用人が「退職届」を残して姿を消したのだ。屋敷は一夜にして空箱になった。
フィーネは王都の片隅で小さな薬草店を開く。持ち出したのは、自分が三年間で身につけた薬草の知識と、たった一冊の手帳だけ。そこに記された数百の処方箋が、やがて王都の人々の暮らしを変えていく。
薬草店を手伝う青年騎士レオンとの出会い、義母が隠してきた公爵家の真実、そして「聖女」を巡る思わぬ陰謀。フィーネは逃げるのではなく、自分の力で立ち上がることを選ぶ。
名誉が嘘で作られるなら、実力は真実でしか証明できない