あらすじ
「修理なんて、代わりはいくらでもいる」
A級パーティ『絶雷』で三年間、装備を直し続けた八雲継。
戦闘力ゼロのE級【修理】スキル持ち――その貢献は「当たり前」として切り捨てられ、ある日突然追放される。
だが、修理師の手は止まらない。
単身で潜ったダンジョン最深層。そこで見つけた壊れた神器を直した瞬間、千年の封印から目覚めたのは――銀髪に紫の瞳を持つ、A級相当の戦闘力を持つ守護精霊・ラクナだった。
「あなたが、わたしを直してくれたんですね」
穏やかな微笑みの裏に、千年分の孤独と激重すぎる愛情を隠した少女。
継を「継さま」と呼び、丁寧語で溺愛し、他の女性に近づくだけで「敵ですか?」と微笑む。
その嫉妬はやがて、影の魔法で相手を威嚇するまでエスカレートしていく。
一方、修理スキルの真価は爆発的に開花する。
剣を新品以上に修復。魔法陣を改修。前代未聞のダンジョンコア修復に成功。
「壊す」しかなかったダンジョンを「直す」という、誰も考えなかった解決策で世界を変えていく。
噂は広がり、管理局が専属契約を迫り、法的圧力をかけてくる。
ラクナは継を守るため暴走寸前まで追い詰められ、千年前に「壊された」過去のトラウマが明かされる。
「壊さなくていい。——俺が直すから」
継はスキルでは直せない「心」に、人として向き合うことを選ぶ。
そしてS級ダンジョンブレイク。
世界が壊れかけたその時、継はS級コアの修復という人類史上初の偉業を成し遂げる。
取り残されていた元パーティ『絶雷』のリーダー・断雷は、かつて追放した修理師の前に膝をつき、額を地面に押しつけた。
「……すまなかった」
英雄として迎えられた継を待っていたのは、ラクナの影の結界。
「ずっとここにいてください」——千年の想いが溢れ出し、丁寧語が崩壊する。
「——お願い、どこにも行かないで」
修理師は、壊れかけた精霊の心を読み取り、静かに答える。
「お前が壊れそうになったら、何度でも直す。スキルじゃなくて——俺が」
穏やかな夜。膝枕で眠る継の上で、ラクナは空の歪みを見つめて呟く。
次に壊れるのは——この世界の方ですよ。
壊れたものを直す男と、壊れた心を持つ精霊の、甘くて重い物語。