あらすじ
婚約破棄と断罪の翌日、エルゼが始めたのは農業だった。
前世の記憶がある。農業試験場の研究員として28年間土を触り続けた記憶が。だから計画はシンプルだった。農地を整えて、資金を貯めて、王都の外へ逃げる。感情は後回し。土が先。
でも計画は、少しずつ狂い始める。
近隣農家の男が農地を荒らした。追い返す代わりに、雇った。宮廷医師団から問い合わせが来た。断る代わりに、供給を始めた。農地が好きになった。農業法人を作った。
そして毎日農地の端にいる貧乏騎士が、ずっと見ていた。
「逃げるための農業でした。でも今は、なんというか——畑が好きです」
逃げる計画は、いつの間にか居場所を作る計画に変わっていた。