あらすじ

八年越しの離縁届に、夫は何の感慨もなく署名した。 ワインの栓を抜く音だけが書斎に響いた。 薬師の名門に生まれたヴァレリアは、嫁ぎ先の侯爵家で八年間、薬草園を守り続けた。調合した薬は夫の名で売られ、功績はすべて侯爵家のものとされた。それでも耐えたのは、計画があったからだ。帳簿に仕込んだ一行、契約書に忍ばせた条項。八年かけて、自分の名前を取り戻す準備を整えた。 路地裏に構えた小さな薬房。客はまだ少ない。銀月草の仕入れ先は侯爵領に握られている。計画通りにいかないことばかりだ。 そんな店に、一人の商人が現れる。帳簿を読む目が鋭く、走り書きの字は汚いが、数字だけは正確な男。「商売の話なんだが」が口癖のくせに、商売では説明のつかないことばかりする。 彼女は薬を作る。彼は道を作る。その先に何があるのかは、まだ誰にもわからない。

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小説を読もう2026/04/03
  • 現在の作品離縁届に夫が署名した瞬間、私はワインを開けた