あらすじ
神が沈黙し、奇跡が起きなくなった世界。
聖職者でありながら釘バットを振るう“殴りプリースト”のシノは、祈りよりも拳を信じ、弱者を食い物にする者を殴り倒しながら各地を放浪していた。回復魔法は使えるが、それは神の加護ではなく、劣化した術式を叩き込むだけの力にすぎない。それでもシノは言う――奇跡は待つものではなく、自分で起こすものだと。
一方、大聖堂の象徴として崇められていた聖女は、神が沈黙を貫く現実の中で自問を重ねる。祈りに応えがない以上、聖堂で何が為せるのか。大神官によって行動を制限され、象徴として“守られる”立場に置かれた末、聖女は自らその名を捨て、人として現場に立つ道を選ぶ。
暴力で最前線に立つシノと、手を伸ばし続ける元聖女。二人は決して同じ道を歩めない。目指すものも、救い方も違うからだ。それでも互いに、相手の中に自分に足りないものを見てしまう。正解のない選択を繰り返し、成功も失敗も引き受けながら、二人の道は交差しては離れていく。
神は最後まで沈黙する。奇跡も起こらない。
それでも人は動く――拳と手で、救いの役割を引き受けるために。
これは、わかりやすい悪も救済もない世界で、「それでも立ち止まらない」者たちの物語である。