あらすじ
常に重苦しい霧に沈む街、骸(ムクロ)市。
その片隅で接骨院を営む主人公・山仲は、どんな重度の痛みも指先一つで消し去る凄腕の治療家として、人々から「完璧な先生」と称賛される日々を送っていた。
しかし、その白衣の下にある彼の魂は、ひどく乾ききり、腐敗していた。
家に帰れば、ヒステリーと凄惨な自傷行為で彼を罪悪感の底に縛り付け、永遠に支配しようとする女・京子が待っている。他人の身体の狂いを治せても、自分の心も、彼女の狂気も救うことはできない。
治して、狂って、やり過ごす。
終わりのない地獄のようなループ。これが己の人生なのだと、彼は諦めていた。
だが、土砂降りの雨がアスファルトを叩く深夜。
鳴るはずのない受付の電話が、静寂を切り裂いた。
「……どうしても、診てもらいたいんです」
受話器の向こうから聞こえた、ひどく透き通った女の声。
それが、山仲の歪んだ日常を完全に粉砕し、彼の中に眠る「真の力」と「支配欲」を呼び覚ます審判の鐘の音だった。
これは、己の指先一つで女たちの心身を支配し、絶対的な救済を与えていく男と。
その快楽と癒やしに依存し、狂信し、やがて甘く悍ましく壊れていく女たちの、底なしの狂気の記録。