あらすじ
「湊さんは、本当に便利で……愚直なまでに一途よね。助かったわ」
五年間、誠心誠意尽くしてきた婚約者に放たれたのは、あまりに冷酷な言葉だった。
二人の結婚資金として預けていた貯金を浮気相手との挙式費用に使い込まれ、住んでいたアパートからも追い出されたシステムエンジニアの久遠湊(32)。
彼は裏切りへの落とし前を弁護士にすべて委ね、身一つで古びたアパート「日暮荘」へと逃げ出す。
「もう、誰も信じない。一人で静かに暮らそう」
そう決めた引っ越し初日。隣の広大な洋館から「助けて……」という消え入りそうな声が響く。
駆けつけた湊が見つけたのは、空腹のあまり行き倒れていた絶世の美女、九条栞(39)。
彼女は亡き夫が遺した洋館に一人で住む、超人気ミステリー作家だった。
しかし、その実態は「〆切前の修羅場」でゴミ屋敷と化した部屋に蹲る、生活能力が完全に壊滅した女性で……。
行きがかり上、湊が作った一杯の温かいスープが、孤独だった二人の運命を劇的に変えていく。
これは、誠実すぎて損をしてきた男が、一人の女性の「英雄」となり、やがて彼女の才能を支える専属主夫として本当の居場所を見つけるまでの物語。