あらすじ
魔力値、計測不能。
王立カルヴェリア魔法学院の入学式、魔法適性判定でそう読み上げられた瞬間、教室に笑いが起きた。
等級F——魔法が使えない落ちこぼれ。
カイ・レインは、それを聞いて、静かに自分の席に戻った。
傷ついた様子もなく。怒った様子もなく。
ただ——少しだけ、口の端が動いた。
この学院には、国内最難関を突破した魔法師の卵たちが集まっている。貴族の子弟、天才と謳われる少女、地方から這い上がってきた者たち。誰もが等級を持ち、誰もが魔法を使える。
その中で、カイだけが「何も持たない」生徒として三年間を過ごすことになる——はずだった。
だが、気づいている者がいる。
S等級の天才少女エリアは、入学初日から「おかしい」と感じていた。
体術の授業で見せた動き。図書館で読んでいた文献の難度。誰かが困っていれば、いつの間にか解決している。そして何より——どんな状況でも、あの目が揺れない。
「あなたは、誰なの」
カイは笑って答えない。
「カイ・レインです」
それだけだ。
王都の外では、何かが動き始めていた。
魔法の秩序を壊そうとする者たち。闇の中で取引する者たち。そして——名前さえ知られていない、最も静かな者たち。
カイはそれを知っている。
なぜなら——
これは、最強が落ちこぼれを演じる物語。
そして、灰の底で何かが燃え続ける物語だ。