あらすじ
前世、現代日本の物流企業で過労死したサラリーマンは、
中世ヨーロッパ風の王国「ヴェスタリア」の悪役貴族家——
ハルツ侯爵家の嫡男・ルードヴィヒとして転生した。
増税と腐敗が民を苦しめるこの国で、ハルツ家は代々「悪の流通網」
すなわち闇市を運営してきた。ルードヴィヒは前世の知識を活かし、
この闇市を感情抜きの効率で整備する。品質管理、分散備蓄、価格安定——
庶民の生活を支えるインフラへと変えていく。ただし動機は善意ではない。
「運営が続けば数字が合う。それだけだ」
そこへ颯爽と現れるのが光教会公認の勇者・セリアス。
本物の正義感を持つ青年だが、「悪の拠点」と判断した施設を焼いた先に
薬草や食糧が積まれていようとも——教会の指示に従い動き続ける。
彼の通った後で、子供たちの熱は下がらなかった。
ルードヴィヒは問いかける。「あなたが焼いた倉庫の後、三か村の死者を調べましたか」
勇者を動かしているのは善意か、それとも——?
剣を持たない悪役令息の武器は、数字と情報と、世論である。
世論を設計し、事実を積み上げ、教会の腐敗を解体する。
これは正義の物語ではない。
悪道を行く、運用と効率が物を言う物語だ。