あらすじ
「……っ、はぁ。……たす、けて。……吸わせて、くれ」
俺、佐藤和馬は絶望していた。季節の変わり目、重度の喘息発作。
死にそうな喉から絞り出した掠れた声は、しかし――。
「結婚してください!!」
「その吐息、録音させてっ!」
なぜか、聴く者すべてを骨抜きにする「伝説のハスキーボイス」へと変換されていた。
本人は酸欠で三途の川が見えているのに、周囲は色気の致死量で天国が見えている。
コンビニで、リモート会議で、病院の受付で。
命がけの「ゴクッ」という嚥下音さえもが、深夜のジャズバーのような色気を放つ。
これは、不健康すぎる喉を持つ男が、意図せず世界を陥落させてしまう、命がけの勘違いコメディ。