あらすじ
未来視に重力を操る、強大な『星』の魔法を持ちながら、愛する村の土壌改良のためだけに力を使っていた魔女、アストラ。
しかし二十歳の誕生日の朝、彼女のもとに王国からの徴兵令――「国家資産」としての接収令状が届く。
戦場で未来視を搾取され、五感を失うだけの「予言機」として使い潰されるか、村が火の海になるか。
絶望の未来を避けるため、アストラは着の身着のままで逃走を開始する。
追っ手から逃れるために魔法の代償を払い、嗅覚、味覚、触覚、聴覚を次々と喪失していくアストラ。
ついに視界までもが灰色に染まり、生きる屍のように行き倒れた彼女が辿り着いたのは、どこの国にも属さない境界の飛び地『ラストスタンド』だった。
五感のほとんどを失い、泥だらけで動けないアストラを拾ったのは、ちぐはぐなパッチワークの服を着たお節介な酒場娘・ルル。
「だめだよ動いちゃ! あなたボロボロだったんだから……私がいるから、もう大丈夫」
国家資産でも、恐ろしい魔女でもない。ただの病人として扱われる日々。
感覚がないアストラに、ルルは手作りの特製オムライスを食べさせ、温かいお湯で身体を拭き、村の優しいはぐれ者たちと一緒に、これでもかと徹底的に甘やかしていく。
これは、国に全てを奪われ、灰色の世界に落ちた魔女が、最果ての村で最高に可愛い村娘の『温度』に触れ、五感を取り戻していくまでの、優しくて温かい救済の物語。