あらすじ
職業:清掃員。今日もホウキを持っている。
そんな男の家に、三人の美少女が転がり込んできた。
だが、世間が崇める彼女たちの「表の顔」は、この家では一切通用しない。
◆ コレット(ギルド受付嬢・16歳)
普段は愛想のいい「完璧な看板娘」。だが、この家では猫を被り続けられない。
「べ、別に心配してたわけじゃないし……変な勘違いしないでよね!」
と言いながら、震える手で涼の袖をギュッと掴んで離さない。
怒っているのに耳が真っ赤。強がっているのに目が泳ぐ。
自称・冷静な財務管理者だが、涼に「いつも助かる、ありがとう」と言われるだけで思考がフリーズし、算盤を落とすポンコツ受付嬢。
◆ サキヤ(王国最強の近衛騎士団長・18歳)
外では「氷の剣聖」と恐れられ、誰も寄せ付けない孤高の騎士。
だが、涼の前でだけは、その鉄壁の防御が音を立てて崩壊する。
「……これは、膝枕の耐性訓練の一環よ。決して、甘えたいわけじゃないわ」
顔をリンゴのように赤くして言い訳しながら、涼の膝の上で一瞬でスヤスヤと寝落ちする。
涼の胸でこっそり泣きじゃくった夜のことは、国家機密よりも厳重に隠している(つもり)。
◆ リリアーナ(神聖国見習い聖女・15歳)
清楚で物静か、慈愛に満ちた「聖母の再来」。
……のはずが、古代ゴーレムや魔法遺物を見た瞬間に、重度の魔導オタクの本性が暴走する。
「ちょっ、ダメですぅぅ! その関節の魔力バイパスはもっと繊細に扱わないとッ!」
猛烈なタックルで涼を押し倒してから我に返り、真っ白な顔で固まる。
普段は無口なのに、好きな話題(と涼の噂話)になると酸欠になるほどの早口が止まらない。
「警護です」を名目に、今日も涼の半径2メートル以内をキープし続けている。
三人とも、涼の前でだけは「最強」を脱ぎ捨ててしまう。
三人とも、涼の作った飯を食べると、幸せすぎて耳まで赤くなる。
三人とも、肝心な「好き」の一言は口にしない。
……けれど、その瞳の湿度は、隠しようもなく愛を語っていた。
当の本人は、今日も静かにホウキを動かしている。
「悪くないな」
——それがこの男の、不器用で精一杯な、彼女たちへの答えだった。