あらすじ
猿真似ハネ曰く、
『世には二種類の悪がおる。欲に負けて人を喰う、つまらぬ悪。己の正しさに酔い、人を踏み潰す、見飽きた悪。そして稀に、世界そのものを面白く歪めようとする、上等な悪がおる』
犯罪都市ラディウム。
暴力で秩序を保つ赤地区。欲望が渦巻く黄地区。規律が支配する青地区。三つの悪が均衡を取り合う、腐りきって美しい街じゃ。
そこへ一人の少女がやって来る。
名は、凰乃。
英雄になる気はない。弱者を救うつもりもない。世界を正す興味もない。
あやつが望むのはただ一つ──悪が悪として生きられる秩序。
善人を喰うだけの下劣は不要。力なき者を踏むだけの愚物も不要。悪ならば、美しくあれ。賢くあれ。責任を負え。
くふふ……実に生意気で、実に愉快じゃ。
されど、どれほど完成された秩序にも綻びは生まれる。どれほど強き悪にも、終わりは訪れる。
そして混沌は、いつだって最も面白い時に口を開けるものよ。
その時、少女は何を選ぶか。
支配か。破壊か。それとも、誰も見たことのない悪の完成か。
これは正義の物語ではない──悪人が、悪人のための世界を組み替える物語。