あらすじ

孵化から十日目。 稚魚の命を左右する繊細な作業の最中、東町のもとに一本の電話が入る。 海外でフグを採集したいという教授の指導を頼みたい——そんな依頼だった。 準備不足のまま海外へ向かおうとする教授に、東町は違和感を覚える。 特に、教授が探そうとしている Fluviatilis は、そもそもボルネオ島にはいない。 古い論文の誤記を信じたまま、教授は“存在しない魚”を求めて海へ向かう。 助言は届かず、忠告は水面に触れる前に消えていく。 三度の採集の末、教授が持ち帰ったのは泥と別種のフグだけだった。 水槽の前で稚魚に餌を落としながら、東町は静かに思う。 命は、正確な一手でしか守れない。 背後の机には、かつて教授に「おもちゃ」と笑われた本が、静かに開かれていた。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/04/23
  • 現在の作品おもちゃの本