あらすじ
──迷宮大崩壊まで約15年。世界は英雄を求めていた。
自分こそがその英雄なのだと豪語する少年ゼノ・アルヴィンは、いずれ来る覚醒の時に備えて幼馴染の少女フィリスを引き連れ、近所の迷宮で冒険ごっこに興じていた。
だがある日、その夢はあまりにも残酷な形で打ち砕かれる。
迷宮で格上の魔物に追い詰められ、死を覚悟したその瞬間――奇跡に選ばれたのはゼノではなく、隣にいたフィリスだった。
圧倒的な力を手にしたフィリスは、やがて町を襲った魔物の大侵攻さえも、たった一人で食い止めてしまう。
さながら英雄譚の序章のような活躍をする幼馴染の姿を見て、ゼノは自らは凡人に過ぎないのだと思い知らされる。
一方で英雄として祀り上げられた彼女を待っていたのは称賛だけじゃなかった。
「もっと上手くやれたはずだ」「フィリスに任せれば、俺たちは安泰だ」
人は勝手に期待し、勝手に押しつける。力ある者にだけ全てを背負わせようとする。いつしか孤立していくフィリスの姿を見て、ゼノは決意した。
──俺はフィリスを独りで戦わせない。
これは、世界を救う英雄の物語じゃない。
その英雄を、独りで戦わせないための物語。