あらすじ
侯爵令嬢フィオナ・エルクレアは、十八年かけて聖女になろうとした。
祈り方を学び、ふるまいを磨き、神殿の望む“清らかさ”に自分を削り続けた。
だが最終選定の日、彼女はたった一言で切り捨てられる。
「あなたの祈りには雑音があります。清らかさが足りません」
能力ではない。努力でもない。
彼女の存在そのものが、“本物の祝福”にふさわしくないと判定されたのだ。
婚約は白紙。神殿を追われるように辺境の施療院へ送られたフィオナは、そこで知る。
本物の祝福は、辺境にはほとんど届かない。
届く前に、人は死ぬ。
ならば――本物を待って死ぬくらいなら、偽物で生かせばいい。
フィオナが手を伸ばしたのは、神殿が禁じた模造術式。
それは本物より遅く、不格好で、術者への負担も大きい。
けれど、今ここで、目の前の命を繋ぎ止めることだけはできた。
やがて彼女のもとへ、監視役として神殿騎士アルトがやって来る。
“本物の秩序”を守る男と、“偽物でも間に合わせる”令嬢。
ぶつかり合う二人の前に現れるのは、圧倒的な力を持つ本物の聖女セレナ、そして辺境を襲う大規模災厄。
本物だけが救いなのか。
届かない奇跡より、間に合う偽物に価値はないのか。
聖女失格の令嬢が、禁じられた祝福で辺境の命を救いながら、
“本物しか救えない世界”をひっくり返していく、異世界ファンタジー。