あらすじ
大人気RPG『ソングバードオンライン』――ある魂が転生した先は、のちに人類を大量殺戮する黒天魔王レイヴンだった。魔王なんかやってられるかと人間世界に溶け込むも、そこで勇者少女プレイアと奇妙な共闘関係に落ち着く。
プレイアと共に他魔王は倒したものの、人類大量殺戮イベントが強制発生。
自分が生きている限り止まらない。
運命を悟ったレイヴンは敢えて魔王らしく最後の悪役を演じ、プレイアに自らを討伐させた。
道中で会ったヒロイン達が助かったことを喜びながら、レイヴンは二度目の生涯を終えた――。
……。
……。
……などという前世を思い出す気配のない渡空翠は、生まれながらに魔術が使えない落ちこぼれとして、家を追い出されていた。
さらには酷いイジメの果て、不条理に高校を退学させられそうになる。
飛べないカラス。
そう揶揄されたまま、命を断とうとさえしたその時。
突如現れた|波鴇《はと》という転校生の少女によって退学を撤回された。
しかし何故面識が無い筈なのに助けてくれたのか。
|波鴇《はと》は自分の事を知っているらしい。
恐る恐るどちら様? と聞いてみると
「私は前世では、勇者プレイアと名乗っていました」
「あなた前世で『黒天魔王』レイヴンと呼ばれていました」
……は?
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「わたしが、勇者のくせに、あなたを救えなかった」
「大丈夫、今度こそ幸せにするから、私が、私が、私が」
「どこにいても、どんな時でも、例え世界終焉の厄災相手でもあなたを守るから」
「もう魔王にならないで、どこにもいかないで……」
病みが深すぎる。曇ってるどころじゃない。色々監視とか強硬手段に出ようとしてくる。本当に前世とやらで何をしたんだ自分は……。
一方、徐々に『黒天魔王』の力が覚醒する。特定の魔物を無限召喚できる百鬼夜行まで使えるらしい。これなら自称勇者系少女に守ってもらわなくても済む、安心させられる――なんてはことなく、魔王の力がトラウマらしい少女にさらに曇られてしまう無限ループ。
こんな付き合いは健全じゃない。何より自分を助けてくれた恩人に曇ってほしくない。
前世に囚われたままの少女を曇り空から助けるべく、一向に前世を思い出せない空翠は行動を開始する!!
……その善性故に無意識に自己犠牲し、結果やっぱり少女の顔が曇るのだけど。
ただ厄介なのは『前世の関係者を名乗って曇る子』が一人じゃないということ。
そしてやっぱり前世の記憶も、曇った愛を捧げられる謂れも思い出せないことである……