あらすじ
十八歳の誕生日、デビュタントの夜。
虚弱体質で社交も満足にこなせないこと、そして「女の身で知性をひけらかす」という理由で婚約を破棄された令嬢シャルロッテ・アンドレア・グラナディールは――その瞬間、歓喜に打ち震えた。
「これでやっと、死合わせになれますわ♡」
満面の笑みのまま心臓を止め、彼女は自ら死を選ぶ。
向かう先はただひとつ。幼い頃より幾度も死の淵で出会い、恋に落ちた存在――死を統べる孤高の支配者、アルマンディウスのもと。
棺桶で冥界へと“再入国”したシャルロッテは、冷徹な彼に「帰れ」と突き放されながらも、めげることなく求婚を繰り返す。だがある日、アルマンは彼女の“死”に違和感を覚える。それはいつもの発作ではない――何者かによる毒殺未遂だった。
解毒のため、触れることすら避けてきたはずの彼が初めて距離を破り、シャルロッテを抱き寄せ、その胸に口づける。
「……死なないでくれ」
届かぬ想いとともに。
現世に戻せば再び命を狙われる。そう判断したアルマンは、異例の決断として彼女の冥界滞在を許可する。
かくして始まるのは、死にたがり令嬢による前代未聞の“冥界改革”。
悲嘆と絶望で淀むステュクス河、行き場を失った魂たち、非効率な運営体制――それらすべてを前に、実業家の娘シャルロッテは微笑む。
「ここは未開の市場ですわ。わたくしが、最高の楽園にしてみせます♡」
癒やしの温熱砂浴、記憶を和らげる水の活用、魂の流動を変える事業計画。
常識外れの発想で冥界を“リゾート”へと塗り替えていく彼女の姿に、冷酷無比だった支配者アルマンの心は次第に揺らいでいく。
だがその裏では、シャルロッテの命を狙う陰謀が静かに進行していた。
そして彼女の胸に宿る“柘榴の心臓”――本来ならば冥界に属するはずの魂を現世に繋ぎ止める禁忌の存在が、すべての鍵を握っていると知る者が現れる。
これは、死から始まる恋。
これは、世界の理を覆す再生の物語。
「わたくしの新婚生活は――死んでからが本番ですもの♡」
死にたがり令嬢と、触れられない冥界の支配者。
甘く、危険で、運命的な“溺愛”が、今――動き出す。