あらすじ
1980年代、札幌。
平岸の白い喫茶店で「借り物の名前」に守られていた僕は、いつの間にかこの街を動かす冷徹な力学の一部に組み込まれようとしていた。
商業の中心がパルコへと移り変わり、若者たちが新しいブランドに熱狂する一方で、僕はマスターのセドリックを転がし、ススキノの裏通りで「しめ縄」を売って歩いた。それが単なる正月飾りではなく、この街の「血流」なのだと理解しながら。
ディスコ55(ディー5)に響き渡るアース・ウィンド・アンド・ファイアーの『セプテンバー』。
ダブルベッドの上で知った、生々しくも滑稽な大人の入り口。
そして、闇に呑み込まれかけた親友を救うために打った、孤独な博打。
面白ければそれでいい。そう思ってアクセルを踏み続けた、あの不純で黄金色の季節を、もう一度だけ振り返ってみようと思う。
『札幌、北の境界線』―― vol.2
ここから先は、もう引き返せない夜の話だ。