あらすじ
「宇宙は、私に会いたかったのだ」
2020年、春。横浜の設計事務所の窓から、隔離された客船と赤い海を見つめていた男、宮城野拓。世界が未曾有の激動に揺れる中、彼は自身の人生が崩壊していく音を聞いていた。
躁鬱の波、信じていた者による裏切り、そして最愛の姉との死別。
過去のすべてを清算し、八丈島の泥の中に沈んだ彼が手にしたのは、目に見えない生命のネットワーク――「菌糸」の力だった。
これは、一人の開拓者が箱根の聖域に「国」を創り上げるまでの、再生の記録である。
角川の恩人からの「本物の原作を」という問いへの、命がけの回答。
木を賀(よろこ)ぶ地・木賀で見つかった「神水」が、乾いた魂を潤し、途切れた命のリレーを再び繋いでいく。
「問いなき共生」という罪を溶かし、境界のない未来を土の下から作っていく。
父から受け継いだ命を息子へ繋ぐため、泥にまみれながら綴る「生きた遺言」。
いま、箱根の深い霧の中から、新しい世界の産声が上がる。