あらすじ
「主は従者を愛してはならない」
それは、王国に仕えるすべての者に叩き込まれる絶対の掟だった。
王族直属の従者メイは、主人である若き貴人の身の回りを完璧に整えることを唯一の役目として生きてきた。
本名すら捨て、主から与えられた名で呼ばれ、感情を持たぬ人形のように仕える日々。
それでよかったはずだった。
しかし主人は、なぜかメイだけを特別に扱う。
彼女の淹れた紅茶でなければ飲まず、彼女の料理でなければ食べず、怪我をすれば自ら駆け寄って手当てをする。
その優しさはあまりにも不器用で、あまりにも真っ直ぐだった。
周囲が二人の関係を怪しみ始める中、メイは徹底して「自分と主はただの主従関係だ」と言い聞かせる。
だがその行動は、かえって彼女を主人から遠ざける結果を招いてしまう。
離れて初めて知るのは、仕えていたのが命令だけではなかったこと。
守られていたのが立場だけではなかったこと。
忠誠か、愛か。
役割に生きる従者と、掟に縛られた主。
誰より近くにいながら、決して結ばれてはならない二人が、それでも互いを選べるのかを問う、主従ロマンスファンタジー。
メイ
主人公。王族直属の従者。
冷静で有能、給仕・料理・護衛補助・身辺管理までこなす完璧な存在。
本名を捨て、主から与えられた「メイ」という名で生きている。
従者として感情を持たないよう振る舞っているが、主に名を呼ばれるたび胸が痛む。
「知らないふり」で自分を守っている人物。
主様(若き王族・当主)
メイの主人。身分が高く、本来は感情より責務を優先すべき立場。
普段は気高く理性的だが、メイのことになると露骨に冷静さを欠く。
紅茶、食事、世話のすべてを彼女に任せたがり、彼女が傷つくと身分も体裁も忘れて庇う。
愛情表現が不器用で、本人だけがそれを隠せていると思っている。
メイド長
屋敷内の秩序を管理する人物。
感情ではなく規律を優先し、メイと主の距離を問題視する。
敵役というより、制度の代弁者。
他の使用人たち
噂を広げ、空気を作る集団。
嫉妬、好奇心、畏れが入り混じっている。