あらすじ
———出来る子になった愛花なんて、退屈で仕方ない
誰もが羨み、格式の高い家系である葉矢川《はやかわ》家に仕える従者の種市芽衣《たねいちめい》には溺愛する主人がいる。
その令嬢である葉矢川愛花《はやかわまなか》である。
幼い頃から共にし、幼なじみ兼従者として時を過ごした芽衣は、愛花の姿に目を奪われ続けていた。
愛花は議員の家系でそれに見合ったものを求められる美人の令嬢なのに、彼女の能力は見合うことなく低かったからだ。
大富豪の娘として品があるのに愛花はダメ人間で、すぐ失敗をする。
ただ……彼女は前向きに笑っていた。
芽衣はそんな彼女に魅了された。
ファッションも、勉強も、運動もダメで間も悪い愛花が、どうにも愛しかった。
そうして周りからは愚図と誹られても、なお笑って明るく振る舞うのだ。
自分のダメっぷりを受け入れながら、改善を目指しても失敗する愛花のことが芽衣は好きだった。
そして愛花もまた、自分をいつも助けてくれる芽衣のことを、本気で愛していた。
そんな愛花の困りごとを、芽衣は毎日のように解決している。
「お嬢様はダメな人ですね」と穏やかに笑いながら。
———ただ
ただ芽衣にはひとつ、愛花に対してどうしても許せないことがあった。
それは———彼女が出来る子になってしまうこと。
それだけは芽衣にとって受け入れ難いものだった。
愛花のアンバランスさに魅入られた従者の芽衣は、今日も困っている主人に助け舟を出す。
ダメなお嬢様以外を愛するつもりのない芽衣が、丁寧に愛花を導いていく。
自分の愛する主人がダメ人間のままでいるように、最新の注意を払いながら。
ダメ人間で足りないものが多いのに、嫉妬することなく前向きに笑う彼女が愛おしい。
ダメ人間の主人である愛花と、そんなダメ人間を溺愛する芽衣。
これはそんな2人の歪んだ主従愛の物語。