あらすじ
三十一歳の王宮肖像保管局肖像目録官エルマ・ヴァインベルクは、婚礼肖像や持参絵画の目録を守る仕事に誇りを持っていた。だが『絵を見ているだけでずるい』と笑う二十六歳の義妹イリスに婚約も王宮画廊の展示主任席も奪われ、返還されるはずだった亡き母の持参絵画目録の欠番まで押しつけられて北辺収蔵庫へ左遷されてしまう。割れた額縁と塗り潰された裏書に触れた瞬間、消された所有記録や描き替えられた顔を読み解く【裏書読解】が覚醒。奪われたのは婚約だけではなく、母が遺した嫁入り肖像と本当の出自までだった。無口な三十五歳の北辺公ルーファス・ノルトハイムとともに絵画の裏面を洗い直すほど、義妹の花嫁肖像、偽りの家紋、王宮画廊局の横流しが一本につながっていく。もう私は、誰かのために壁を飾るだけの額縁じゃない。大人の肖像目録官が絵画と人生を取り戻す、お仕事逆転溺愛譚。