あらすじ
三十二歳の王宮祝宴席次台帳官アニカ・リーベルは、王家主催の夜会や祝宴で、誰をどの席へ通すかを記録で支えてきた。だが三十五歳の婚約者である祝宴局補佐ゲルハルトと、二十七歳の義妹リディアに婚約も王宮祝宴の席も奪われたうえ、大使席を入れ替えた不敬の責任まで押しつけられてしまう。追いやられるように向かった先は、雪峡の関門迎賓館を預かる三十八歳の北辺侯ヨナス・ノルトフェルトのもと。凍えた大広間、二重に売られた貴賓席、偽物の招待札、消えた来賓録の頁、そして『本物の令嬢』を名乗る義妹の嘘。席次帳、厨房搬入名簿、馬車到着記録、家紋席札を洗い直すほど、王宮祝宴局の不正は一本の線へつながっていく。無口な北辺侯が毎朝いちばんに新しい席表を届けてくれる迎賓館で、アニカは自分の仕事も居場所も人生も取り戻していく。大人の女性が記録で逆転し、最後には自分の名で卓をひらく再出発譚。