あらすじ
「だって、こうしないとキミを守れないでしょ?」
幼馴染で隣の家に住む、ライオン獣人のレーナ。
金髪のロングヘアに、頭の上のライオンの耳、腰の後ろから伸びる尻尾。可愛らしい見た目からは想像もつかないが、彼女の身体能力は人間離れしている。
スポーツは全種目、全国レベル。リンゴを片手で潰す。町に流れ込んだ獣人の不良グループを、たった一人でボコボコにして二度と寄りつかなくさせた——そんな噂が、町中に広まるほどの、圧倒的強者。
なぜ、そんな彼女が、僕にだけ、べったりなのか。
——理由は、はっきりしている。
まだ幼い頃、じゃれ合いの最中に、彼女の爪が僕の頬に痕が残る傷をつけた。その瞬間から、レーナの人生の目的は「僕を守ること」になった。
「キミに二度と傷をつけさせないために、ワタシが、これから現れるあらゆる敵から、キミを守ります」
以来、十年。
毎朝腕を組んで登校し、不良が僕に絡めば爪を振り上げて突っ込んできて、家では窓を飛び越えて部屋に侵入してきては、僕の膝の上で飼い猫みたいにゴロゴロと喉を鳴らす。
僕の守護神にして、僕の前では撫でられたがりの飼い猫。
——彼女の爪が、僕に向くことなど、絶対にない。
十年間、それを信じてきた。信じきっていて、油断していた。
その日、トラ獣人の後輩にアプローチをかけられているところを、レーナに、目撃された。
「『何もされてない』、ね。嘘つき」
ハイライトの消えた目で、甘く囁かれた。
「浮気者」と一言告げられて、家まで引きずられて、彼女の部屋に連れ込まれた。
爪の一振りで服を裂かれた。肌には傷一つ、ついていない。完璧にコントロールされた、絶対に僕を傷つけない一撃。
——なのに、それが、何より、怖かった。
「もう、襲うしかなくなっちゃったよ」
僕を守る力が、僕を奪う方向に振り向けられた時——抗う術は、何一つ、残されていなかった。