あらすじ

舞台は、近代化の影で怪異が人知れず跋扈する架空の帝都「桜都(おうと)」。 主人公のシイナは、妖(あやかし)絡みの不可解な事件を解決する裏稼業「代書屋」を営む青年です。彼は一切の戦闘能力を持っていませんが、対象の嘘を見破る異能と卓越した頭脳、そして冷徹なまでの交渉術で裏社会を生き抜いています。しかし、飄々とした態度の裏には、過去に強大な妖に「名前」と「感情の大部分」を奪われ、不老の呪いを受けた「空っぽの器」であるという暗い秘密がありました。 ある日、シイナの前に現れたのは、軍の特務機関から脱走した青年・クロウ。彼はその身に最悪の妖の呪いを宿す「咎憑き」であり、圧倒的な暴力で桜都の闇を震え上がらせる存在です。しかし、彼の真の望みは「己の中の呪いごと、自分を完全に殺してくれる妖」を探すことでした。 シイナは自身の失われた感情を取り戻す手がかりを得るため。クロウは自分を確実に滅ぼす死処を見つけるため。決して交わるはずのない二人は、完全なる利害の一致から共犯者としての契約を結びます。 「僕が君の死処を見つけてあげる。だからそれまで、僕の番犬になってよ」 最初は互いを利用するだけの、極めてドライな関係でした。自らの命すら効率のための駒として扱うシイナの底知れぬ虚無感をクロウは軽蔑し、クロウの自己犠牲的で危うい生き方をシイナは冷淡に笑います。理解し合える要素など一つもない二人でしたが、帝都で起こる様々な猟奇事件の謎を解き明かしていく過程で、否応なく互いの隠された深い傷に触れていくことになります。 転機は中盤、因縁の妖との接触によって訪れます。決して生きることに執着しなかったシイナは、自分のために死に欠けているクロウの姿を見て、失われていたはずの激しい感情を自覚します。それは「こいつを死なせたくない」という強烈な執着でした。一方のクロウも、戦う力を持たない弱さを抱えながら、それでも知略の限りを尽くして自分を生かそうと足掻き続けるシイナの背中に、かつて失った人間としての光を見出していくのです。 物語の終盤、桜都全体を飲み込もうとする巨大な呪術犯罪の陰謀が明らかになった時、二人は単なる契約関係を超えた、互いの魂を縛り合う「共犯者」としての絆を試されます。戦う力を持たないシイナが身を削って仕掛ける起死回生の知略と、己の命を燃やして道を切り拓くクロウの武力。空っぽの代書屋と死にたがりな咎憑きが、互いの欠落を完全に補い合い、背中を預け合う唯一無二の存在として、絶望的な運命に反逆の狼煙を上げます。 これは、死を望んだ青年と生きる意味を失った青年が、互いのために初めて「明日」を渇望するようになるまでの、救済と執着を描き出す現代ファンタジーです。女性読者の心を揺さぶる、濃密な感情の交差をお約束します。

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カクヨム
カクヨム2026/04/21
  • 現在の作品宵闇の共犯者たち 空っぽの代書屋と死にたがりな咎憑き