あらすじ
蒸気と歯車が支配する「鉄の帝国」アイゼンライヒ。
辺境の街で暮らしていた少年アーサーは、人間の肉と魂を喰らう異形の怪物『ナイトメア』によってささやかな平穏を理不尽に奪われる。
絶望の淵で目覚めたのは、すべてを灰に帰す「紅蓮の炎」。
大切な人を奪った忌まわしきその力を、彼は世界の歪みを正すための武器へと変えた。
国家公認の特務魔術師『紅蓮の魔術師』として、天を突く蒸気塔と黒鉄の高架が交差する帝都ミュンゲンへ足を踏み入れたアーサー。だが、華やかな帝都の裏側では、ナイトメアが絡む猟奇的な怪事件が次々と発生していた。
冷徹に任務を遂行するアーサーは、ある日、軍の廃棄場で一体の壊れた機巧兵と出会う。
その機械は、かつて軍が開発した特異個体「Unit-09」。
機敏な近接格闘に特化し、命令に忠実であるよう設計されたにも関わらず、疑似人格の発生により“守る”という概念を優先。人命救助のために幾度も軍の命令に背いた結果、「欠陥品」として瓦礫の中に打ち捨てられた存在だった。
煤けた鋼鉄の装甲を纏い、コアから鈍い赤い光を明滅させるその名もなき機械に、アーサーは最も純粋な騎士の名を与えた。
「ガラハッド」
心を捨て、炎に魂を焼く青年と、心を持った機械の騎士。
孤独な二人は相棒となり、帝都を蝕む不可解な事件に身を投じていく。
その影で不気味に微笑み、暗躍する『魔女』たちの存在に近づいているとも知らずに――。
涙の代わりに紅蓮を灯し、錆びついて軋む心を火種にして。
悲しみごとすべてを灰に還す青年の、残酷で美しい反逆の軌跡が、今、静かに燃え上がる。