あらすじ
「クレア、婚約を解消したいのだが」
王太子アルバートにそう告げられた公爵令嬢クレア・ヴァルデンは、一瞬だけ沈黙した。
「……承知いたしました。引き継ぎに三日いただけますか」
王太子は気づいていなかったが、婚約してからの五年間、クレアは誰にも知られないまま王国財政を支えてきた。月次予算書、各国との交渉ドラフト、農業補助金の算定——大臣の名義で出された書類の実態は、すべて彼女の仕事だった。
婚約破棄されたクレアは、百冊分の引き継ぎ資料を残し、静かに王都を去る。辺境伯にスカウトされていたから、行き先はとっくに決まっていた。
2ヶ月後、王宮では——
「この資料、どこに……?」
「イェスナとの交渉が止まっています」
「クレア様は、どこへ……?」
婚約破棄されても困らなかった有能令嬢は、辺境伯に見初められ幸せを築いていく―――