あらすじ
『健康な私の胃袋は、あなたの命も逃さない』
「健康だから」と
あなたは言った
それは祝福ではなく
境界線を消す呪文だった
私の食事
私の薬
私の時間
すべてが
“余っているもの”として扱われた
あなたにとって私は
人ではなく
供給源だった
譲るたびに
削れていく輪郭
それでも私は
優しさだと信じていた
けれど
気づいてしまった
あなたが守りたかったのは
私ではなく
あなたの都合だったと
——だから私は
取り戻すことにした
ひと匙の栄養
ひと粒の意思
ひと呼吸の余白
それは小さくて
けれど確かな
“私”のかけら
テーブルの上に並ぶ
食べ物と薬
どちらも同じ
生きるためのもの
ただひとつ違うのは
誰がそれを手にするか
あなたは言った
「健康な人は大丈夫だ」と
ええ、そうね
私は健康
だから
もう譲らない
あなたの命を奪うのではなく
あなたの人生を背負わない
それだけのこと
胃袋は満たされる
体は軽くなる
心は静かになる
健康とは
強さではない
奪われないこと
そして私は今日も
静かに、生きている