あらすじ
高知県四万十の高校生・秋幸は、国語の授業で夏目漱石の『こころ』を読んでいた。なぜ漱石は「心」ではなく「こころ」と書いたのか——その問いを胸に下校する途中、トラックに轢かれ意識を失う。
目が覚めると、石炭の匂いと見知らぬ女の声。
そこは1906年の日本だった。
異世界転生を夢見ていた少年は、しかし異世界ではなく「帝国」の時代に叩き込まれる。ハルという女性に導かれ、社会主義運動家・幸徳秋水の言葉に触れ、秋幸は初めて自分の「こころ」を持ち始める。
しかし歴史は変わらない。弾圧が来る。喪失が来る。
1911年、秋幸は死を選ぶ。
次に目覚めた場所は2034年——崩壊直前の日本だった。街の空気が、あの1906年と同じ匂いがした。
歴史は繰り返す。一度目は悲劇として。二度目は笑劇として。
三つの時代を横断した秋幸には、2026年の自分に伝えなければならないことがある。届くかどうかはわからない。それでも彼は選ぶ。