あらすじ

カークス・ピコピコドリルにとって、姉フランの作る卵焼きの匂いは「世界が続いている証明」だった。両親を亡くしてから五年、フランはすべてを背負い、何事もなかったかのように日常を守り続けてきた。だから信じていた。明日も、同じ朝が来ると。 だが、その日は違った。 目覚めても、匂いはない。台所は冷えきり、フランの姿はどこにもなかった。 残されていたのは、青白く光る“液体”の痕跡だけ。 それは、町で囁かれていた悪夢の証だった。 ――人間を「人工培養液」に変え、意識を保ったまま閉じ込める魔法使い。 やがて現れた旅の少女ロッタは告げる。 フランは、弟を守るために自らその魔法使い――マリウスのもとへ向かったのだと。 守られてばかりだった自分。何もできないまま、失うだけで終わるのか。 選択の余地はなかった。 「――行く。フランを、取り戻す」 初めて自分の意志で家を飛び出したカークスは、ロッタと共に東の廃村ルートへ向かう。そこは“消えた人間”が最後に目撃された場所。だが待っていたのは、現実を侵食する魔法と、「人の意志そのものを奪う」という狂気の力だった。 触れれば終わり。 意識を保ったまま、“液体”に変えられる。 なぜ人は狙われるのか。 なぜフランは、自らその場所へ向かったのか。 そして――間に合わなければ、もう二度と戻らない。 世界が溶けていく中で、少年は初めて選ぶ。 守られるだけの存在を捨て、自分の足で進むことを。 これは、喪失から始まる物語。 そして――“取り戻すために戦う”物語。

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小説を読もう2026/04/21
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