あらすじ
やっと、定時退勤できる。
晴れ晴れとした気持ちで、エヴァは朝の空を見上げた。
勇者に不要と言い渡された、その日のことだった。
彼女は勇者パーティの副長。
三年間、糧食も矢も兵卒の名簿も、一人で抱えてきた。
その紙束を、聖女は「子供の工作」と笑った。
流れ着いた辺境の廃村に、見知らぬ男がいた。
隻眼の傭兵団長。
三年前、国境で剣を交えた元敵の男だった。
「飯を食っていけ」
そう言って、彼は粥をよそった。
理由は、問わなかった。
ふと思い出したのは、三年前の戦場の傷のこと。
誰が自分を運んだのか、彼女は知らない。
名簿には、名前が載っていなかった。
彼の左目の傷は、雨の日に疼くのだろうか。