あらすじ
切り刻まれた結界
白は、ただの色ではありませんでした
針は、ただの飾りではありませんでした
一針ごとに編んだのは
祈りではなく、式でした
優しさではなく、境界でした
――それを、あなたは
軽い音で切り裂いた
しゃきり、と
布が裂けたのではありません
世界が、ほどけたのです
けれどお母様
あなたは笑っていらした
「地味ね」と
ええ、そうでしょう
華やかさなど、必要ありませんでしたから
これは魅せるためのものではなく
守るためのものだったのです
だから私は
泣きませんでした
怒りませんでした
ただ、理解したのです
――ここには、もう境界がないと
風は濁り
花は伏し
やがて、あなたの愛したものから順に
壊れていくでしょう
それでも私は
振り返りません
だってあの白は
もう二度と織れないのですから
最後の糸は
あなたの手で
切られてしまったのです
そして今
私は、新しい式を書く
誰にも触れられない場所で
誰にも壊されない形で
これは復讐ではありません
ただの結果です
ただの、終わりと始まりです