あらすじ

社会人二年目の秋、俺の部屋で音がし始めた。 最初は冷蔵庫の近くから聞こえる細い音。次に、身に覚えのない写真。部屋の隅に現れる黒い染み。そして、暗闇の中で俺の名前を呼ぶ声。 職場の先輩・田中さんは言った。「返事をするな。声を出すな。お前の声を、これ以上覚えさせるな」 やがて田中さんは消えた。 俺は一人で抱えることになった。声を集めるものを。俺の名前を、漢字まで正確に知っているものを。夢の中にまで入ってくるものを。 知っている人間の顔を借りて話しかけてくるものを。 これは祓った話ではない。逃げた話でもない。声を持っていかれないように、ただ黙って、息を殺して、年を越した男の記録だ。

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小説を読もう2026/04/21
  • 現在の作品『声を覚えられた話』