あらすじ

川沿いの寂れた茶店に、ふらりと現れた男・景司。人の懐に自然と入り込む“人たらし”の彼は、店を畳もうとしていた女に「春の間だけ開けてみては」と勧める。半信半疑で暖簾を出した店には、やがて働き疲れた者や孤独を抱えた人々が訪れるようになる。過去の事故に囚われる辰蔵もまた、その一人だった。景司は何かを教えるでもなく、ただ話を聞き、ほんの一言を添えるだけ。それでも人は少しずつ、自分の足で前へ進み始める。やがて女もまた、亡き夫と残された茶碗への思いと向き合うことになる。ある日、茶碗は割れるが、景司は「なくなったわけではない」と静かに言う。春の終わり、景司は行き先も告げず去る。だが、店には人が集い続け、言葉やぬくもりは人から人へと受け継がれていく。残るものは、形ではなく、人の中にある、そのことを静かに描いた人情譚。

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エブリスタ
エブリスタ2026/04/07
  • 現在の作品人たらしの景司