あらすじ
「あなたのっ! 人権とっ、貞操をっ! 買い取って差し上げますわっ!」
——目の前に、札束が投げつけられた。軽く百万円。
そして、その後ろの大型トラックには、さらに億、いや、兆の単位の資産が積まれていた。
……エルフの国に、倫理という言葉はないのか。
クラスメイトのエルフ娘、ミルフィ。
交換留学でやってきた、エルフの国の王族。プラチナブロンドの長い髪に、空色の瞳、細く長い耳。
人間離れした美貌で登校初日にクラスの空気を凍らせた彼女は、俺の隣の席になった瞬間、こう言い放った。
「一目惚れ、してしまいましたわ……!」
以来、半年。猛アプローチは日に日に濃縮されていき、そしてある日曜日、公園に呼び出された先には、SP十数人と国家予算級の資産を積んだトラックが待っていた。
——金で、人権を、買うな。
だが、ミルフィは意外と話は通じる。
「その札束、お前が稼いだ金か?」と問えば、しょんぼりと首を振る。
王族ゆえに金を稼いだ経験がない、と素直に認める。
ならば、と俺は提案した。
「バイト、しない?」
「……バイ、と?」
「アルバイト。時給で働いて、自分で金を稼ぐってやつだ」
こうして、エルフのお姫様がコンビニバイトをすることになった。
カスハラ客を微笑みで撃退したり、レジの下で俺と手を繋いできたり、ショボい額の給与明細を握りしめて「このお賃金ではいつまで経ってもあなた様の人権と貞操を買えませんわ!」と叫ぶ日々。
ところが——俺はそんな彼女に致命的な失言をしてしまった。
「あのな、愛は、お金で買えないんだぞ」
「……なら、どうしたら、買えるのですか?」
「買うんじゃない。自分の力で、相手を振り向かせるんだよ」
それを聞いたミルフィは、ぶつぶつと何かを呟き始めた。
「外堀」「封鎖」「資産」
——数日後、俺はコンビニに、一日貸切で閉じ込められることになる。
「お金は、外堀を埋めるために使いましたの♪」
「あとは、わたくしの力で、あなた様の愛を得ようと思うのです💞」
助けは、来ない。エルフのお姫様に、襲われる。
こうなったら、せめて、端っこの棚に陳列されている避妊具を……あれ、売り切れ!?
「そこになければ、ないですね💞」